死神(三遊亭円生6)

え〜、昔からこの、流行り廃りというものがございますが、こりゃ、どうも、妙なもので、洋服なども、近頃は大変細いズボンになりまして、細くない、少し太いのを履いていると、何かこう、馬鹿のように見えましてね−−金の工面ができずに、女房から小言を言われた男が、ひょっとしたことで死に神から声をかけられ、儲けさせてやるから医者になるように勧められる。死に神を見えるようにしてやるから、病人を見て、病人には死神が憑いており、病人の足下にいたら呪文を唱えて死神を退散させれば病人は治る、一方、頭の方にいたら寿命なので治らないという。医者を始めてみると、名医と呼ばれるようになり一財産を作る。女をつくって上方へ遊びに行って金を使い果たして一文無しで帰ってくる。再び医者を営むが、死に神は頭の方ばかりにいて、あまり儲からない。大金持ちからのからの依頼があったが、これも死神は頭の方にいる。家族から一万両をもらえると聞いて、死神が寝ているうちに病人の寝床を回転させて頭と足の方向を変え、死に神が足下にいるようにして呪文を唱え、病気を治す。その後、死神が男の前に現れ、地下に連れて行く。たくさんの蝋燭がある。それは人の寿命で、消えかかっているものが男の寿命、病人のものと取り替えたことになっている。死神は灯しかけの蝋燭をつなぐようチャンスをやる。男は震えてなかなかできない。死神「消えるよ、ふふふっ、ふふふっ、消えるよ、おい、消えるよ、あ〜、消える」
 マクラは神様の流行り廃りについて。暗めの語り口が噺にぴったり。無駄なくしっかりした筋立てが素晴らしい。緊張感が持続し引き込まれて、満足できる。ただ、下げはチトあっさりとした演出。

2012(米2009)

 売れない作家一家と地質学者を主とするパニック超大作。太陽の凄いフレアにより、ニュートリアが地球に物理的な変化を与える。そんなことはどうでもいいこと。地殻が浮遊化し大変動を起こす。世界中の国が地殻の変動で破壊。アメリカを中心とする世界各国は秘密裏に巨大な避難船を建造、まさにノアの箱船だが、いろいろあって、地殻の破壊と大洪水から生き残る。ハッピーエンド。
 脚本の細部はどうでもいい。とにかく自由な発想で都市を、自然を破壊すればいいのだから。そんなパニックの中で、必ず出てくる醜い利己主義と、この手のテーマに不可欠な自己犠牲が美しく描かれるのだ。ここでは、作家一家が大災害から逃げるシーンが特筆される。まさにアクションゲームそのもの。沈みゆく地殻や崩れる高層ビルからの脱出。これがあり得ないシーンで、度肝を抜かれる。CGなればこその映像だ。「インディペンデンス・デイ」と全く同じテーマ。エメリッヒ監督はすっきゃな〜。前半のアクションの印象が強すぎて、後半部は、ちょっと人情を入れようとするので、人類の危機が数分に迫っているのに、流れを遮る中途半端な愛情表現にはいらいらさせられた。音楽はハラルド・クローサー とトマス・ワンダー、何ともノリのいいロック調の音楽と、低音のリズムがスコアが 心拍数を上昇させる。大画面で見るべき映画。ストレス発散にはふさわしい。

兵庫船(桂枝雀2)

いよいよ三日目でございます。一生懸命のおしゃべりでございます。今日、私、割合早くに、ここに着きまして、四時少し前ぐらいに着いたんでございましょうか、本当はそんなに早く来んでもいい訳でございます。−−四国讃岐の金比羅へのお詣りの帰り、友達二人連れが、兵庫加治屋町の船着き場から船に乗ることにする。大勢の人、帆を上げて進み始める。乗り合いの人々は、世間話で自己紹介。時間つぶしに謎かけが始まる。わいわがやがや楽しむ。気づくと船が一向に進んでいない。先導に聞けば、このあたりに住むフカが客の誰かに魅入ったので船が止まった、魅入られた人が海に飛び込めば動くとのこと。一人ずつ、自分の持ち物を海に入れて、そのまま流れればよし、沈んだものが魅入られた人だとのこと。若い巡礼の持ち物が沈んだが、乗客の一人がフカに掛け合い、キセルの吸い殻を口に入れたものだから、あつくて潜ってしまい、船は動き出す。客が「兄さん、あんたお強い人だんな」「当たり前よ。おれにかかったらフカでも鮫でも。ぐちゃぐちゃに潰してしもたるんじゃ」「へ〜、ご商売は」「わしゃ、雑魚場のかまぼこ屋じゃ」
 マクラは時間つぶしの出来事について。喜六と清八の二人のキャラクターがぼけとつっこみで、ぼけがいつもの師匠のキャラクターで誠におかしい。情景描写も少なめではあるが効果的。乗客の描き訳も巧みで、笑にシフトした旅話で、ほのぼのとした風情が楽しめました。さすがの実力でした。

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(マゼール=ニューヨークpo)

北朝鮮での演奏会の録音。演奏前にマゼール自ら曲について説明する。ニューヨークpoの委嘱であったことや霊歌などアメリカの素材が使われていることなどを。1.テンポを自在に変えて主題を対比的に演奏する。しかし、情に流れることなく、細部まで良くコントロールされ、すばらしいアンサンブルで各声部がクリアーに描き分けられている。歌うところは情感豊かに歌い、また、重量感や迫力、緊張感も不足していない。知的に考えられた、巨匠風の演奏だ。2.ゆったりとしたテンポで丁寧に描かれる。しかし、中間部ではこれまでにないほど悲しく深刻な雰囲気になる、十分に練られた結果だ。3.早めのテンポで推進力がある。緩徐な部分はゆったりとかなりテンポを揺らせる。4.大変な勢いを持って開始され、スケール感と緊張感は充分だ。総じて、自信に満ちたコントロールで確信を持った演奏。メロディーを充分に歌うが情に流されてはいない。クールで、あっさりと進めている。フィナーレのフェルマータは適度にきっている。無法なやくざな国、北朝鮮での演奏だけに、緊張もあるのかアンサンブルに若干の傷があるう。年老いても、若々しさと巨匠性を保ったマゼールでした。残響が豊富で音質もいい。(NYP)

1.Adagio — Allegro molto
2.Largo
3.Scherzo: Molto vivace — Poco sostenuto
4.Allegro con fuoco

潜水服は蝶の夢を見る(仏=米2007)

 脳幹部の脳梗塞で眼以外の運動機能が麻痺した雑誌編集長の実話。目が覚めると、見ることしかできない。最初は悲観的な考えに終始していたが、相手に読んでもらったアルファベットを瞬きで選ぶことにより、意思の疎通ができるようになり、本を書き上げ出版する。そして、その10日後に肺炎が基で死亡した。カメラが患者の目になっている。視点が逆でちょっと違和感があるが、患者側からの気持ちがよく理解できる。自分を潜水服をきて海底に沈んでいると表現し、そんな沈鬱な状態の中、蝶がさなぎから出るように回復することを夢見ている。全身不随の患者が考えるのは夢と過去の思い出。切実な話。現実の中に思い出した過去のシーンが、主人公の人生を加えていく。秀逸なのは、マックス・フォン・シドーの演技でした。音楽はほとんど無い。ヨーロッパ映画らしく地味ながら、訴えるところは多かった。だが、いかんせん感情が沈んだままで、気分も浮かび上がらず、中でちょっと退屈した気分になった。
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