誠にありがたいこってございまして、一生懸命おしゃべりをいたします。早いもんで今日が六日目でございます。今日だけお越しいただいた方もあるわけでございますが、六日間ずっとお越しいただいた方もあるわけでございます。−−ご隠居さんが亡くなり、町内の者が手伝い。二人が受付をしていると、次々に悔やみにくる。炭屋は商売物の宣伝になるし、また、最上屋のおなごしさんは馬鹿丁寧。手伝いの又はん。悔やみが女房ののろけに変わり、二人は唖然。あげく「今時分、内のかか、家でようじっとしとらんと思いまんねん。ちょっともはよ顔見せて、安心させたりま。さいなら、ごめん」「え〜、なんとも、えげつのないのろけやな」−−おなじみの「くやみ」というばかばかしい・・
マクラは独演会での心情、挨拶、特にお悔やみについて。マクラは相変わらず、素晴らしくおもしろい。本編ではくやみの失敗を過度に膨らませて、それを受ける人たちの登場が少なく、バランスを崩していて、いつもの爆笑に今一歩及ばなかったように感じた。大好きな噺家なのであえて分析してみているが、並の噺家のレベルではないので誤解なきよう。
続いて聞いていただくわけでございますが、もう、ほとんどブームというより、定着いたしましたのが、カラオケというやつでございますが、皆様もそれぞれにお歌いになるのやないかと思いますね。−−下手な浄瑠璃を人に語って聞かせることが趣味の旦那、今日も浄瑠璃の会を計画するが、長屋の者も奉公人も、理由をつけて誰一人来ない。怒った旦那は、店立て、暇を出すと無茶を言い始める。気の利く奉公人が、皆を集めて、会が開催される。渋々、集まった人たちは旦那の浄瑠璃のひどさを話しながら待つ。昔、旦那の浄瑠璃を聞いて倒れて他界した玉子屋さんの話になる。「半年ほどして死んでしまいましたな。あんまり不思議なちゅうんで、大学の病院で解剖してもらいましたら、玉子屋さんの胸から、こんな大きな浄瑠璃の塊が出てまいりました」−−おなじみの寝床浄瑠璃でございます。
マクラはカラオケ、浄瑠璃について。相変わらず旦那が憎めない可愛らしいキャラクターなのはいい。しかし、久七の旦那との会話が、煮詰まってない感じ。皆が嫌っていることを台詞に含んでいるのだが不自然で、思ったほど笑いが出ていない。しかし、おもしろいことには間違いない。クスグリを発展させ爆笑を誘っている。そのため、本来の筋が弱くなっているのが相変わらず残念。
え〜、相変わらずのお笑いでございます。何事によらず、陰気陽気って〜ものがございますもので、御宗旨にも陰陽がございます。−−念仏をあげながら、気がついたことで片っ端から小言を言う亭主。仏壇から始まって、学校へ行く子供、朝食の汁の具まで及び、どじょうを具にすることにして、どじょうを鍋に入れ酒を加えて火にかけさせる。「ごとごといってるな。苦しがってるな。おもしろいな。南無阿弥陀部、南無阿弥陀部。静かになったな〜、蓋開けてみろよ。腹を出してみんな死んじゃった?ざま〜みやがれ。南無阿弥陀、南無阿弥陀」−−何にもなりません。小言念仏というお話でございます。
マクラは信心と宗旨の小咄あれこれ。細かいことに気がつく主人公のいらち傾向のキャラクターが、次々に繰り出す小言がおかしさを誘う。この話が十八番の当代小三治師のとぼけた判事のキャラクターとは正反対。これがまたおもしろい。一気に進めるすがすがしさがある。
え〜、「カタカナに“ト”の字の一の引きようで、上になったり、下になったり」、カタカナのトの字の上に一を引くと、「下」という字です。下に一を引くと反対に上という字になります。−−野駆けに出て目黒で、農家の焼いていた旬のサンマを初めて食べて気に入った殿様が、園遊会に出席した際、食べたいものを尋ねられ、サンマを求める。銚子のサンマを上品に料理するが、まずいので、どこから取り寄せたと問えば「魚は銚子の沖の本場にござります」「なに、これが銚子じゃ。それでいかん、サンマは目黒に限るぞ」
マクラは華族様が下々のものを知らないことの小咄あれこれ。うんちくによって密度の濃いマクラによって、噺の背景がよくわかる。キレよく張りのある声で殿様の威厳がよく出ている。まことに晴れ晴れとして竹を割ったようの明快さの仕上がりで、聞いていて気持ちがいい。
え〜、ご機嫌よろしゅうございます。相変わらずのお笑いでございます。「情けは人のためならず」ということわざがございます。人に情けをかけるなんというのは、神信心でもしようというような年頃にならないと起こりません。−−佃島の住吉様のお祭りに出かけたお店の旦那の次郎兵衛。しまい船に乗り込もうとすると、一人の女が引き留める。おかげで、しまい船に乗り遅れてしまう。女は三年前に吾妻橋身投げをしようとしたところを、次郎兵衛さんに五両をもらって助けてもらったとのこと。ご亭主が船頭なので、いつでもお送りするというので、女の家におじゃまになる。あたりが騒がしくなってくる。亭主が戻ってくる。仕舞い船がひっくり返り助かったものはいないとのこと。夫婦は次郎兵衛にお礼を言ってご馳走をして、船を出して送っていく。一方、お店では仕舞い船で次郎兵衛が亡くなったと大騒ぎ、長屋の月番の与太郎も悔やみに行くがうまくいかない。そうしているうちに、次郎兵衛が帰ってくる。皆驚くが、訳を聞いて、大笑いで帰って行く。この話を横で聞いていた与太郎、いいことをすれば助けられると思いこみ、家に帰って道具箱を打って五両の金を作り、身投げを探して歩くが出くわさない。永代橋にかかると涙をためた三十、二三のお上さんが欄干に上がって片手合掌で川の中を見ている。身投げと思って止めに入った与太郎。女は「冗談いっちゃいけませんよ。歯が痛いから、戸隠様に願をかけてんだ」「袂に石が入ってりゃ」「こりゃ、納める梨でございます」
マクラは信心、虫歯の神様の戸隠さまと梨について。立て板に水の威勢のいい語り。うんちくで溢れるマクラ、無駄ない筋立てと巧みな声による見事な人物描写。立派な口演でわかりやすいが、拙にとっては堅すぎる。